エレメント長と周波数特性

2020年1月21日記載

■はじめに
八木アンテナを製作する場合、加工誤差、ブームの影響などにより電気的なエレメント長がシミュレーションデータと異なってしまう場合があります。今回はエレメント長が変化した場合のアンテナ特性の周波数変化をシミュレーションを使って確認します。

■条件
シミュレータは、MMANA Ver.1.77
シミュレーションモデルは、YBN70-5m Ver.3

■計算結果
1.DE(放射器)のエレメント全長を±4mmで変化させた場合
【VSWR】

VSWRが最小になる周波数に大きな変化はありませんが、VSWR値は大きくなっています。

【Gain】

432MHzでは、±4mmの変化で0.1dB以下の微量な変化です。

【F/B】

432MHzでは、±4mmの変化で1dB以下の微量な変化です。

2.Ref(反射器)とDx(導波器)のエレメント全長を±2mmで変化させた場合
【VSWR】 ※グラフではDxとなっていますが計算ではRefとDxを同時に変化させています。

VSWRが最小になる周波数がシフトしています。-2mmでは+2.5MHz、+2mmでは-2.5MHzの変化です。

【Gain】

Gainが最大になる周波数がシフトしています。-2mmでは+2.5MHz、+2mmでは-2.5MHzの変化です。

【F/B】

F/Bが最大になる周波数がシフトしています。-2mmでは+2.5MHz、+2mmでは-2.5MHzの変化です。

■結果
1.DE(放射器)のエレメント長を変化させると、VSWRが最小となる周波数、Gain、F/Bへほとんど影響を与えることなくVSWR値が変化する。
2.Ref(反射器)とDx(導波器)のエレメント長を変化させると、VSWR、Gain、F/Bの特性が周波数方向にシフトする。

■まとめ
今回の結果はアンテナモデルによって変わってきます。製作するアンテナの物理寸法を変化させるとアンテナ特性にどのような影響があるのかを定量的に把握しておくことは、アンテナの調整や工作精度を考える上で有益です。

■応用
今回のVSWR特性の変化を利用するとシミュレーションから実物への補正値を容易に求めることができます。YBN70-5mはDEの長さの変化と、RefとDxの長さの変化とでVSWRの変化が違うため、DEの補正値と、RefとDxの補正値を別々に求めることができるので新規補正値算出時に役立ちます。

【計算例】
VSWRが最小になる周波数は、RefとDxの長さに対して0.8mm/MHzで変化。
シミュレーション結果では、432MHz。
実物の測定結果では、434MHz。

周波数が高い方にずれているので実物ではシミュレーションに対してRefとDxを長くする必要がある。
エレメント全長補正値(シミュレーション→実物)=+1.6mm(0.8mm*2MHz)

TOPに戻る